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旧車とSS

空前の旧車ブームです。2輪も4輪も。

 

日本は自他共に認める世界の2輪マーケットをリードする国。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4メーカーが世界のマーケットの中でシェアを大きく伸ばしてもう随分長い時間が経過しました。生産車はもちろん、レースの世界でも多くのカテゴリーで日本車が上位を席巻し、確固たる地位を築いたのです。

 

先進技術と信頼性、この二つが日本車を現在の地位に押し上げた原動力ですが、近年はDUCATIとBMW、Apriliaといった欧州メーカーが、最新技術を盛り込んだ新型車両でSS(スーパースポーツ)車の分野をリードしており、国内メーカーとその覇権を争っている状況です。電子制御スロットルと慣性計測装置を装備し、スライドコントロールやリフトコントロール、クイックシフターにバンク角対応ABSといった最新技術で、200馬力級のスーパースポーツを一般のライダーでも比較的安全に操れるようにしたのでした。

 

ところがそれに反比例するように、従来オートバイ好きがやってきたようなオーナー自らが行うメンテナンスやカスタマイズは、そのハードルが上がり次第に手を出しづらくなってきました。4輪車のそれほどではありませんが、ブラックボックス化が進行しているのです。

 

旧車の魅力は、そのトラディショナルなスタイルにあるのはもちろんですが、シンプルな構造ゆえメンテナンスやカスタマイズがやり易い点にもあります。オーナー自らがエンジンのオーバーホールから車体のペイントまでほとんどの作業を行った、なんていう強者も珍しくないのが旧車の世界です。さすがに『Z2に600万のプライスタグが付いてた』などというのは行きすぎたブームという感じがしますが、今なお日本のオートバイムーブメントを支える40~50代が、子育ても一段落し昔憧れた旧車を手に入れて愛でるというのは、日本のオートバイ文化が成熟してきた証と言ってもいいのかもしれません。

 

もしかしたら50年後地球上に現存するクラシックバイクの多くは、現代の最新テクノロジーを満載したSSではなく、昭和の時代に生を受けたジャパニーズスタンダードかもしれません。