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将棋とバイクと卓球と

空前の将棋ブームですね。藤井7段が棋聖戦を制したことで更に盛り上がるのではないでしょうか。私は全くの門外漢なので、将棋中継の盤面を見てもチンプンカンプンなのですが、解説を聞いたり棋士の表情を見たりするだけでも楽しいです。

 

どんな世界でも新しい若い才能の登場は、その世界を活気づかせます。その才能がこれまでの常識を覆すような規格外のものであればあるほど、周囲の熱狂の度合いも大きくなるのです。

 

1996年オートバイのロードレーシングの世界に、1人の痩せっぽちの少年が登場します。ヴァレンティーノ・ロッシです。当初は転倒も多かったものの次第に頭角を現し、その後125、250、500、motoGPとすべての階級でチャンピオンを獲得するレジェンドになるのは、みなさんご存じの通りです。彼が125で頭角を現してきた頃、私はWSBのメカニックをしていましたので実際にその走りを見たことがなく、友人の日本人GPライダーに『ロッシってどうなの?』と訊いたことがありました。彼は『とんでもないスピードでコーナーに飛び込んで、それじゃ曲がれねぇよ!って思うんだけど、長い手足を使ってクイって曲げちゃうんだよねぇ。俺にはあんなことできない。』と答えたのでした。

どんな世界でも時代が変わるとき、そこに彗星のように天才が現れます。もちろんそこまでの課程でわれわれ凡人には想像もできないような努力の積み重ねがあるんでしょうが、それを微塵も感じさせないような華麗なスタイルで新たな時代を切り拓いていく、その姿に周りのファンは熱狂します。以前はマイナーな競技の代表のように思われていた卓球も、今やオリンピックでメダルが狙えるメジャー競技へと様変わりしました。これも伊藤美誠選手や張本智和選手の登場が時代の変わり目だったように思います。

 

翻って日本のロードレーシング界に目を向けると、そういった才能の登場が途絶えて随分長い時間が経ちます。かつて数多の世界チャンピオンを輩出したあんな時代はもう来ないのでしょうか。いやいやタレントカップを経てステップアップした若い才能が、今moto3で少しずつ花を咲かせようとしています。彼らが世界中から集まった才能の中で切磋琢磨し、大輪の花を咲かせるときが来るのをおじさんは信じていますよ。生きてるうちに最高峰クラス日本人チャンピオンの姿を見たいなぁ。みんなガンバレ! 

 

※画像は妻の秘蔵の1枚。WSBミザノラウンドのチームホスピタリティーに登場したロッシ君。たぶん1998年。